はあとふる成年後見サポートデスク
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成年後見制度とは
成年後見制度は,平成12年にできた制度です。
以前は,高齢者,障がい者などの社会的弱者対策として,行政による保護,管理的な措置制度が行われていました。いわゆる,弱者の生活のありようは行政が決めていたことになるのです。
しかし,措置制度では弱者の豊かな生活等人権を十分に配慮しているとはいえないとの批判の中,弱者も自分の生活を福祉の契約によって選択できる流れになってきました。この流れは「措置」から「契約」へと言われています。
その中で生まれてきたのが,高齢者の福祉契約制度である介護保険制度です。
福祉が契約が選べると言っても,その多様なサービスから自分のあったサービスを選択したり,契約内容を理解したりすることは高齢者等の社会的な弱者にとって簡単ではありません。
そのため,その方々をサポートする必要があります。そこで誕生したのが成年後見制度です。成年後見制度は介護保険と車両の両輪としてここに誕生しました。
現在,介護保険を補完する制度としてのみではなく,悪質な商法,経済的な虐待,浪費などから当事者を守るための制度としても非常に注目を集めています。
成年後見人って何?
成年後見人といっても,正確には補助人,保佐人,成年後見人となります。それぞれの詳細については別の項目で説明します。
成年後見人になるための資格は特にありません。しかし,次の人は成年後見人になることはできません。
①未成年(擬制成年は除く) ②これまでに後見人等を解任されたことがある人 ③破産者
④被後見人に対して訴えを起こしたことがある人,またはその配偶者ならびに直系親族
⑤行方の知れない人
後見人は個人だけでなく法人もなることができます。
個人で後見人になる場合,親族が後見人になる親族後見,親族以外の第三者がなる第三者後見があります。
第三者後見は弁護士,行政書士等の専門家がなる専門職後見,ある程度の講習等を受けた一般市民がなる市民後見があります。
また,個人で後見になると言っても複数で後見人になることもできます。身上監護は親族で,財産管理は専門職でといった複数で後見に当たることもできます。また,役割を決めずに複数の後見人がそれぞれ共同で行うこともできます。
法人が後見になることもできますが,法人は実体がないので,実際に後見業務を行うのは法人に属する個人ということになります。
後見人といっても,上記のように様々な種類があります。それぞれにメリット,デメリットがあります。それについては今回は言及しませんが,ただ言えることはどの形であっても,後見人自体が権利擁護的視点をきちんと持っているかということです。本人に安心を提供できるのか?本人,または時には家族の声にきちんと耳を傾けてくれるのか?権利擁護に基づいた援助観を持って後見業務をしてくれるのか?そういったことが大切ではないかと思われます。
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成年後見を利用したら何をしてくれるの?
基本的に成年後見人は,ご本人(後見される人:被後見人といいます)の財産の管理,身上監護を行います。
財産管理とは,そのままの意味で被後見人の財産の管理を行います。例えば,預貯金の管理,通帳等の保管,入出金の管理等です。
身上監護とは被後見人の身の回りのことで必要となる福祉等のサービスに対して,被後見人に代わって契約等をします。病気等で入院が必要となった場合の手続きなども行います。また,見守りといって,被後見人のところに訪問し,健康状態,生活状態(不要なものを買わされていたり,必要なものがなくなっていたりするなど)の確認もします。
財産管理,身上監護ともに支援をしていく中で大切なのは,後見人の価値観や一般的な考え方等を基準に支援内容を考えていくのではなく,被後見人の価値観,好み,満足感など,本人の利益を様々な角度から考え,配慮して行くべきであるということです。
被後見人本人のことを第一に考えることを権利擁護とも言いますが,この権利擁護的視点を持つことが成年後見人にとって一番重要な視点であると言えます。
そういった視点を持ちながら,被後見人の生活を満足のあるものにしていくために,様々な福祉サービス等を利用する等,被後見人の生活のコーディネーター的役割も担います。
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成年後見の種類とは?
成年後見には大きく法定後見と任意後見に分かれます。法定後見は支援内容が法律で定められており,任意後見は当事者間で支援内容を任意に決めていきます。
それぞれ,さらに次のような類型があります。
◆法定後見
法定後見は被後見人の支援の必要度に応じて3つの類型に分かれています。支援の必要度は本人の「判断能力」を基準として補助,保佐,後見の3類型で考えられています。
補助とは,「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(民法15条)」が該当し,比較的症状の軽い知的障害の方が対象となります。
補助では,代理権(本人に代わって補助人が行えるとする行為),また同意権(民法13条1項に定められた重要な法律行為を被補助人が行う場合に補助人の同意が必要となる行為)の範囲を当事者間で定めていきます。
保佐とは「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法11条)」が該当し,中程度の知的障害の方が対象となります。
保佐では,民法13条1項に定められた重要な法律行為を被保佐人がするには保佐人の同意が必要となります。同意を得ずにした法律行為はいつでも取り消すことができます。また,代理権の範囲を当事者間で定めていきます。
被保佐人となると,各種資格や役員等の地位を失うことになります。
後見とは「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者(民法7条)」が該当し,重度の知的障害の方が対象となります。
後見では,日常のちょっとした買い物程度以外のことは後見人が被後見人を代理して行います。
被後見人となると,保佐同様各種資格や役員等の地位を失うことになります。それだけでなく,選挙権や被選挙権までも失ってしまいます。
それまで持っていた権利を,権利擁護的制度を利用することで失うといった面では批判もあります。
補助,保佐,後見のいずれの類型に属するかは医師の診断によって家庭裁判所が決定します。その場合に保佐,後見では医師の鑑定を必要とする場合があります。
◆任意後見
任意後見はその効力の発生の時期によって移行型,即効型,将来型の3つの類型に分けられます。
移行型とは判断能力が低下する前に当事者間で任意に財産管理等委任契約を締結します。その時にあらかじめ,判断能力低下後は任意後見契約に移行する契約を締結しておきます。そうすることによって,判断能力低下前から低下後に至るまで切れ目なくサポートすることができます。
即効型とは法定後見で補助類型にあたる方のように任意に契約をすることが可能な方が対象となります。契約内容は理解できるが,日常生活において所々で困る場面がある方等はこの契約を結ぶことで結んだ時点からサポートを受けることができます。
将来型は判断能力低下前に,任意後見契約を締結しておき,判断能力低下後にその契約の効力が発生する類型です。
任意後見契約は公正証書にする必要があり,そのために費用がかかります。また,契約するだけで効力が発生するのではなく,家庭裁判所に後見監督人の選任申し立てをして,後見監督人が選任された時点で効力が発生するようになります。
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成年後見を利用するためにすることは?
成年後見制度を利用するためには法定後見,任意後見それぞれ次のような手続きを行う必要があります。
◆法定後見
法定後見は本人(被後見人)の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
住所地の判断は施設等へ長期間入所している場合等,住所を移していなくてもその施設の住所で申立てができたり,申立人の申立て等の手続により住所地で申立てができたりする等,柔軟にできる可能性があるので,各地の家庭裁判所に確認してみる方がよいと思われます。
申立には決められた書類の作成や準備が必要となります。また,それらの費用は基本的に申立人の負担となります。
申立てを行えばすぐに後見人が選任されるのではなく,選任まで1ヶ月から場合によって4カ月程度かかる場合があります。
申立には作成する書類として,申立書,申立事情説明書,同意書,本人の状況説明書,成年後見人等候補者事情説明書(候補者がいる場合),財産目録,収支予定表,財産等の裏付けとなる添付資料があります。
申立てをするにあたり,登記印紙,収入印紙,切手等,約9000円分程度必要となります。
また,用意するものとして医師の診断書,本人の戸籍謄本・原戸籍謄本・戸籍附票・登記されていないことの証明書,申立人の戸籍謄本,後見人候補者がいる場合は,候補者の戸籍謄本・登記されていないことの証明書・身分証明書・住民票が必要となります。
それらを用意するために手数料等が約9000円程度必要となります。
保佐,後見類型で鑑定が必要となる場合は鑑定費用として5~10万円程度必要となります。
また,申立てに関しては自分ですべて行わず,専門家に依頼することもできます。その時には専門家に対する報酬が別途発生します。
◆任意後見
任意後見は当事者間で契約をし,その契約書を公証役場で公正証書にする必要があります。その場合に1万1千円の費用がかかります。移行型にする場合には財産管理等委任契約も公正証書にする必要があるので,その費用の1万1千円が必要になります。
この任意後見契約は任意後見監督人が選任されて初めてその効力が発行するようになります。
任意後見監督人が選任されるためには,任意後見契約が登記されて,ご本人の判断能力が不十分な状況になってしまった上で,一定の者による家庭裁判所への選任の申立てが必要となります。
申立ては本人,配偶者,4親等内の親族,任意後見受任者が行うことができます。管轄については法定後見と同じです。
申立費用についてもほぼ法定後見と同じです。作成する書類としては,任意後見監督人選任申立書,申立事情説明書,財産目録,収支予定表,任意後見受任者事情説明書等が必要となります。
用意するものとして,申立人の戸籍謄本,本人の戸籍謄本・住民票・後見登記事項証明書・登記されていないことの証明書,任意後見監督人の戸籍謄本・住民票・身分証明書・登記されていないことの証明書,任意後見受任者の身分証明書,任意後見契約公正証書の写し,診断書が必要となります。
法定後見と同じく,任意後見契約所の作成から申し立てまで,専門家に依頼することもできます。
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